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手術痕を巡る

 
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 Epiphone OlympicのシリアルNoは二箇所にある。一つはボディ内部のラベルにスタンプ、一つはブリッジの裏に刻印だ。ブリッジの裏にはマジックで"1"と"6"の文字が書かれているがこれは1弦側と6弦側ということだろうか。記載されているNoはどちらも"15128"だ。

  厄介なのはこの番号と年代の紐付け方が二つあることだ。Epiphoneの歴史についての解説書《The Epiphone Guitar Book: A Complete History of Epiphone Guitars》と非公式のNY Epiphoneデータサイト NY Epi Reg(以下Reg)のリストだ。前者によると"15128"は40年製、後者によると39年製と微妙な食い違いがある。いずれにせよ80年近く前に作られた楽器である。度重なる修理を経て当時の姿とは変わってしまった部分もあるだろう。 

 Regには所有者から寄せられた楽器の画像がシリアルNo順に掲載されており、当機に最も近い個体が以下である。シリアルは1つ後ろの"15129"であり、同モデル"Olympic"である。当機と同時に製作されたこの個体は兄弟機の可能性が高く、39年製とされている。ネック、ヘッド、ボディといった交換が難しい箇所については相違なく塗装の雰囲気もよく似ている。しかしよく見ると異なる箇所もある。 

 

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http://wiedler.ch/nyepireg/models/06260_tuners.jpg

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〜39年

http://wiedler.ch/nyepireg/models/16040_tuners.jpg

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40年〜

 第一の差異はペグだ。これは僕が入手したあとで交換したものである。Regの記述によるとWaverlyの三連ペグが載る板の形状が39年と40年とで両端が切りっぱなしのものからベルの頭のようなデザインへと変更されたようである。機能性がかなり低下していたため交換してしまったが並べてみるとオープンギアのかっこよさに痺れる。

 

 

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 またブリッジも入手後に交換した。冒頭でシリアルを示したのはオリジナルのブリッジである。元々ついていたものは台座にアイスの棒のような板切れを乗せただけだったが、交換後のブリッジは弦ごとにピッチが調整されている。

  今回の比較でピックガードが交換されていることに初めて気がついた。黒いプラスチック製である点は一致しているが、"15129"のほうが幾分長さがあり金具の位置が相違している。当時のカタログ( 39年のカタログ"Musical Instruments" 他がRegで公開されている)のイラストと一致していること、別個体の多くが同一のピックガードを有していることから"15129"がオリジナルで僕の"15128"がリプレイスであることは間違いない。ピックガードは40年には鼈甲柄の短いものへと変更されていくこととなる。僕は黒の方がサンバーストのボディに雰囲気がよく合っていて好きだ。

 テールピースも既に交換されている。これにも気がついていなかった。オリジナルは弦をとめる台座を柄の部分が貫通するような形となっているが、当機は貫通していない。さすがにスチューデントモデルでオリジナル状態を80年も保てるわけもなく、どうやら交換できるところはほとんど交換してしまっているらしい、半分以上は僕の仕業であるのだが(他にはフレットはもちろん、バインディングも交換済だ